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2008年12月29日

第四章 オロチ討伐戦―壱―

西暦249年10月 
闇夜を利用して海青を隊長とした50名余りの強兵が支豆支乃御埼に上陸した。

人の気配は無く、ただ波打ち際で砕ける音が木霊するだけで有った。ヤン・ナムは、上陸と同時に夜眼に長けた者らを野に放った。辺りは葦や松が生い茂り、田畑僅かで動物少なし。森から恵みも期待できず貝や魚を糧にするほか無いとの報告が有った。
波打ちの砕ける音を聞きながら、ヤンはひたすら紅き天が空に昇るのを待っていた。紅き天が出たのを確認すると、10名で狭田の王邸に向かったのだ。

王との謁見で海青は『我ら新天地を求め、流れて来た者達。我らをこの国に置いて貰えませんでしょうか? 置いて頂ける間は、争い有らば我らも戦いまする!』と勇ましく口上を述べた。

白髪混じりの王は、暫く王后と眼を見合わせ『それは、ありがたい! 道中耳にしたと思うが、我が国は八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)軍に侵略され続けている。このままでは、近いうちに我らは滅ぶであろう。そんな時にそなたらが来るとは・・・。これは神の思し召しに違いない! そなたらのような勇ましい者達が、我軍に加わってくれると心ず強い限りだ。海青殿! お願いだ。我が軍を率い、八俣遠呂智軍を防いで下され』と王は藁にも縋る想いで海青に懇願したのだった。

『思ったよりも上手くいったな』と海青の右肩を叩きながらヤン・ナムは、労いの言葉をかけた。
『ああ、お前と演習を済ませていたからな。当然の結果だろ、後は任せる』と破顔で応えヤン・ナムの軽く肩を叩き、海青は去って行った。
軍を任せられるとヤン・ナムはすぐさま、狭田兵の隊長を須佐之王側の人間に挿げ替えた。それが済み次第、傭兵に扮した残りの選抜兵を引き入れたのだ。

一息付いた処で草(忍者)の者が戻って来た。報告によると、八俣遠呂智軍は狭田の隣・初の地に本軍と4首長軍・およそ1200名余りが駐屯しているとの事。本拠地にも800名以上・・・配置されているとの事だった。

現状・・・こちらは、辰韓兵1000名・狭田兵400名・親衛隊50名。計1450名。
短期決戦以外・・・勝ち目は無いよな。闇見国(ヤミ)と同盟を結び援軍を貰うのも手だが・・・今までの経緯からすると難しい・・・か。となると、やはり・・・4首長軍をなんとか動けないようにし、各個撃破で・・・勝利・・・出来る・・・はずだ。そう考えヤン・ナムは、一計を案じた。美女兵を厳選して集め、俄か商団を8つ作らせのだ。その間に美味しく強い酒を探すようにも命じておいた。

その準備が整う間にヤン・ナムは、辰韓国の部族長らと戦術を練る事にした。決戦日に闇夜を利用して首長らの砦を、辰韓軍が襲撃。本軍が援軍を出したのを見計らい、狭田軍と親衛隊で八俣遠呂智及び食糧庫を襲撃する計画をヤン・ナムは提案した・・・のだが。

ヤン・ナラの案を豊かなアゴヒゲを触りながら聴いていた、部族長のバ・レンソが異を唱えた。
『ヤン殿の案に私は、賛成出来かねる。何故! 我らよりも数が多く、強兵と噂される八俣遠呂智軍と戦われるか! 隣国の闇見国は、兵数700余りと聞く。私なら先にそちらを制圧する。この戦は貴殿の言われる通り、失敗を許されんからな!』と譲る気は全く無いという勢いで有った。

熊を思わせるような容姿を持つリ・サズが意外にも馬案に賛同する意見を述べた。
『わしは、ヤンの案よりもバ・レンソの案に賛成だな。わしとて民を率いる長。無謀な戦をする気は無いわ! ヤンよ! 八俣遠呂智軍を先に制圧する理由を、わしが! 納得する形で述べよ。でなければ、わし等はこの戦に加わる事は無い!』と怒気を込めた声で唸ったのだ。

ヤン案にするのかバ案にするのか。意見を述べていない最後の一人に、自ずと皆の視線が集まった。『某は、決まった事に従い申す』と実直なタイガらしい答えで有った。

これはヤン・ナムにとって想定外で有った。まさかあの豪気な男が異を述べるとはな。何事にも慎重なバ・レンソが反対するのは織り込み済みだったが。不味いな、バ・レンソを孤立化させて抑え込む予定でだったのに・・・。私とした事が抜かったな。リ・サズを事前に説得すべきであった。

針のムシロに座るような居心地の悪さを感じていた海青が怒りを爆発させた。『確かに、バ殿の意見には、一理有る。それにヤンの説明不足もな! 感情的になっては、議論にならんぬ! 皆の者、頭を冷やして参れ!』とやや早口で休会を命じたのだ。

ヤン・ナムは、対案を練る為に思考の海を彷徨っていた。そこに闇見国を探らせていた草の者が帰って来たのだ。草の者ともあろう者が・・・捕まっていただと!その後、老王の前に引きずりだされ奇妙な事を伝言として託されたと言うのだ。なんと情けない、だが伝言を託すとは・・・。報告の中で一つ気になる事が有った。

ヤン・ナムは眉間に皺を寄せ『問に正解すれば協力するだと・・・? 奇妙な事とは、申してみよ!』

草の者が『そいつの目はホオズキのように赤々と輝き、身体1つに、8つの頭と8つの尾を持つ。また、その身体には、ヒカゲノカズラが生えており、ヒノキやスギも生えている。その長さは、8つの谷、8つの尾根の間を、さし渡すほどにもなり、その腹は、どこを見ても、いつでも爛れていて血が滲んでいる。これが意味するものは?』と答えたのだ。

意味が解らんが?・・・考えてみるか。
posted by ヒロト&アルル at 00:01| Comment(0) | 出雲王記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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